↑目次へ ←前へ 最初へ 次へ→そんな事を考えていると突然犬が草むらに向かって吼えた。
すぐにガサッと音がしてそこから人影が現れた。
「誰?」
「心なのね。探したわ。」
姉がいる。
目の前に立っている。
間違いない自分の姉の言葉だった。
姉に再会出来たら言ってやりたい事が山ほどあった。
『お姉ちゃんなんか大嫌い!!!』
『お姉ちゃんのバカ!!私やお父さんやお母さんがどんな目に遭ったと思うの?』
『人殺しのお姉ちゃんなんて要らない!!』
でも姉を前にしたらそんな言葉は頭の中から全て吹っ飛んだ。
「お姉ちゃん!!会いたかったよお!!!」
いつの間にか駆け出して姉の胸に飛び込んでいた。
最後に会ったときと変わらないとても暖かでやさしい胸。
涙が止らない。
思ったことが声にならない。
もうこの手を離したくない。
随分恨んだけどそれ以上に大好きな姉なのだ。
見上げると姉も泣いていた。
「心は随分大きくなったわね。もう中学生だもんね。」
「うん。もう2年だよ。」
「心ごめんね。本当にごめんね。」
そういってまたぎゅっと抱きしめてくれた。
「本当は心の様子を見たらそのまま帰る気だったの。
でもそのワンちゃんに見つかっちゃったから出てきちゃった。」
「お姉ちゃん。黙って帰ってたら一生恨んでたよ。」
「私のせいで辛い目に遭わせちゃって本当にごめんね。」
姉とずっと抱き合っていたかった。
でも心がずっと外に出ていることを家の人が不審に思うかもしれない。
そろそろ戻らないと・・
そんな事を考えていると雰囲気を察したのか言葉はこう告げて庭先から立ち去った。
「この先に公園があったでしょ?」
「うん。」
「明日からそこで会おうね、夕方そこにいるから。」
「うん。」
公園には学校帰りに立ち寄る事が出来る。
心はその夜興奮してなかなか寝付けなかった。
またお姉ちゃんと会うことが出来る。
また仲のよい姉妹に戻れる。
「いってきまーす」
翌朝元気な声で挨拶して出て行った心に親戚夫婦は驚いた。
今までは形式的な挨拶はするもののどこか沈んだ感じだったからだ。
何度も変わった転校先で心は無理に自分を作ってきた。
あまり落ち込んでいると辛気臭いとイジメられる。
無理に明るくすると目立ちすぎるとまたイジメられる。
友人関係は広く浅くという感じで特に仲良しを作らない。
成績もわざとテストで空欄を作って中位辺りに留めて当たり障り無く過ごした。
そんな努力も事件の事が知られると水泡に帰すのだが
せめてそれまでは平穏に過ごしたかった。
こんな風に周りの様子を伺ってばかりの自分に嫌気が差すことも度々あったが
心は普通の娘と違って見栄えがした。
少しでも油断をするとすごく目立ってしまう。
目立つ事は危険なのだ。
でも今日からは自分に素直になれる時間が持てるんだ。
学校に着いて噂になっていたのは神奈川での複数の殺人事件。
内容はこんな感じだった。
目撃証言は一件だけで後は全く犯人の足取りが掴めていないとの事。
一件の犯人は若い女性であるという事。
『関係ないや。
もうあそこに戻る事も無いんだし。
それより早く放課後が来ないかな。
お姉ちゃんに会いたいな。』
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テーマ : 二次創作
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