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心 前書き

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数々の話題を提供してくれたアニメスクールデイズですが、
あの事件の後で一番辛い思いをしたのは言葉の妹の心だと思います。

無邪気に姉に戯れていたあの子が事件後どんな生活をしてどんな生き方をしていくのか?
それを書いていこうと思います。

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テーマ : 二次創作
ジャンル : 小説・文学

あれから3年

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あの事件から3年後LMタワーの非常階段で澤永の惨殺死体が見つかった。

目撃者によると腰の辺りに変わったアクセサリーをつけた
髪の長い女性が現場付近から走り去っていったという。



その数日後の事、心は庭に出て星空を眺めていた。

足元には仲良しの柴犬がいる。

ここは神奈川じゃない。

あの事件の後世間の目もあり寂れたこの町へ引っ越したのだった。

心は犬の頭を撫でながら話しかけた。

「最後にお姉ちゃんと会ったのはクリスマス頃だったな。
 彼の家に晩御飯を作りに行くって嬉しそうだったな。
 その頃には誠お兄ちゃんはもう殺されてたんだよね。
 あれさえなかったらみんなこんなに悲しい思いをしなかったんだよね。」

事件は報道されると同時に全国で大騒ぎとなった。

姉は人目を引く容姿だったからネット上で写真がいくつも公開され
家族のデータまで出回ってしまった。

それに伴う邪推も横行し誠と澤永を手玉に取った悪女とまで言われた。

当の澤永や同級生達もわが身可愛さに好き勝手証言したために
ますます報道に拍車がかかってしまった。

そんな状態だったから事件後は行った先で必ず迫害を受けた。

友人は全て敵に変わり誰も信じられなくなりすっかり笑わなくなった。

両親は離婚し最初は母親と行動していたもののすぐに正体がばれてしまう。

泣く泣く遠い親戚筋に養女に入り母親とも別れる事になったのだ。

幸い養子先では夫婦間に子供が出来なかったせいもあって大事にしてもらえた。

親戚夫婦は心が誰とも親しい友達付き合いをしない事に気を揉んだ。

今の心の唯一の友達はこの家に飼われている柴犬だけだ。

心は新しい友達をどうしても作る事が出来なかった。

人は裏切るし裏切られるのが怖いから・・・・

鏡を見る回数も減ってきた。

成長し段々と姉に似てくる自分が怖いから・・・・

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お久しぶり

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そんな事を考えていると突然犬が草むらに向かって吼えた。

すぐにガサッと音がしてそこから人影が現れた。

「誰?」

「心なのね。探したわ。」

姉がいる。

目の前に立っている。

間違いない自分の姉の言葉だった。


姉に再会出来たら言ってやりたい事が山ほどあった。

『お姉ちゃんなんか大嫌い!!!』
『お姉ちゃんのバカ!!私やお父さんやお母さんがどんな目に遭ったと思うの?』
『人殺しのお姉ちゃんなんて要らない!!』

でも姉を前にしたらそんな言葉は頭の中から全て吹っ飛んだ。

「お姉ちゃん!!会いたかったよお!!!」

いつの間にか駆け出して姉の胸に飛び込んでいた。

最後に会ったときと変わらないとても暖かでやさしい胸。

涙が止らない。

思ったことが声にならない。

もうこの手を離したくない。

随分恨んだけどそれ以上に大好きな姉なのだ。

見上げると姉も泣いていた。

「心は随分大きくなったわね。もう中学生だもんね。」

「うん。もう2年だよ。」

「心ごめんね。本当にごめんね。」

そういってまたぎゅっと抱きしめてくれた。

「本当は心の様子を見たらそのまま帰る気だったの。
 でもそのワンちゃんに見つかっちゃったから出てきちゃった。」

「お姉ちゃん。黙って帰ってたら一生恨んでたよ。」

「私のせいで辛い目に遭わせちゃって本当にごめんね。」

姉とずっと抱き合っていたかった。

でも心がずっと外に出ていることを家の人が不審に思うかもしれない。
そろそろ戻らないと・・

そんな事を考えていると雰囲気を察したのか言葉はこう告げて庭先から立ち去った。

「この先に公園があったでしょ?」

「うん。」

「明日からそこで会おうね、夕方そこにいるから。」

「うん。」

公園には学校帰りに立ち寄る事が出来る。

心はその夜興奮してなかなか寝付けなかった。

またお姉ちゃんと会うことが出来る。

また仲のよい姉妹に戻れる。

「いってきまーす」

翌朝元気な声で挨拶して出て行った心に親戚夫婦は驚いた。

今までは形式的な挨拶はするもののどこか沈んだ感じだったからだ。

何度も変わった転校先で心は無理に自分を作ってきた。

あまり落ち込んでいると辛気臭いとイジメられる。

無理に明るくすると目立ちすぎるとまたイジメられる。

友人関係は広く浅くという感じで特に仲良しを作らない。

成績もわざとテストで空欄を作って中位辺りに留めて当たり障り無く過ごした。

そんな努力も事件の事が知られると水泡に帰すのだが
せめてそれまでは平穏に過ごしたかった。

こんな風に周りの様子を伺ってばかりの自分に嫌気が差すことも度々あったが
心は普通の娘と違って見栄えがした。

少しでも油断をするとすごく目立ってしまう。

目立つ事は危険なのだ。

でも今日からは自分に素直になれる時間が持てるんだ。

学校に着いて噂になっていたのは神奈川での複数の殺人事件。

内容はこんな感じだった。

目撃証言は一件だけで後は全く犯人の足取りが掴めていないとの事。
一件の犯人は若い女性であるという事。

『関係ないや。
 もうあそこに戻る事も無いんだし。
 それより早く放課後が来ないかな。
 お姉ちゃんに会いたいな。』

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航海の思い出1

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3年前の事件後言葉は行方不明とされた。

無線にも応答は無いし近海に該当船舶も無かった。

本人死亡の可能性が極めて高いとの事で
現在では事実上捜査は打ち切られていた。

でも言葉は生きていた。

公園で心を待ちながら3年前の船出を思い出す。



世界との決着をつけた後シャワーで汚れを落とし誠を連れて船に乗った。

もう戻る気は無かった。

誠と2人であればどこでも良かった。

誠が生きていようが死んでいようがどんな形でも良かった。

今は自分だけの誠が居る。

街の灯が見えなくなり完全な闇が訪れた。

時計を見ると午前4時。

余程疲れていたのだろう、そのまますぐに船室で眠ってしまった。

目が覚めるともう午後4時。

「誠君一緒にデッキに出ましょう。海がとても綺麗ですよ。」

誠を抱きかかえて夕日を見た。

本当に綺麗だった。

とても寒かったけれどとても幸せだった。

それから数日夕方デッキに出ることは毎日の日課になっていた。

今やれることは誠とデッキで夕日を見て過ごす事だけ。

もう水も食料も尽きてきた。

今日は座るのも辛い。

誠を抱えて寝そべった。

周りには島も陸地もない。

ここまで来ればもう誰も誠を自分から取り上げる事は出来ない。

「やっと二人きりですね。誠君。」

そう安心して語りかけた。

いつの間にか日は完全に暮れていた。

意識もなくなってきた。

寒さも感じなくなってきた。

眠気が襲ってきた。

『誠君もうすぐ会えますね。
 でもなんだか汽笛が聞こえる気がします。
 あれ?周りに人の気配までする?
 でも・・・・もう・・・・このままで・・・・』

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航海の思い出2

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気がつくと言葉は自分のヨットではない汚い船室のベッドに寝かされていた。

目の前には老人と30前後の気の強そうな女がいた。

どうやら2人とも外国人のようだ。

救助されたのかな?

でも誠が・・・誠がいない!!

ベッドの上を探したがどこにも見当たらない!!

「誠君!!誠君はどこですか?!!」

突然上げた大声に2人は驚いたようだ。

日本語も通じないらしく顔を見合わせていたけれど
やがて老人が部屋の隅の冷蔵庫を指差した。

弾かれたようにベッドを飛び出し冷蔵庫を開けると誠はそこにいた。

「よかった。誠君よかった。」

誠を胸に抱きしめて改めて一緒にいられる幸せを実感した。

その様子を2人は奇異な目で見ていた。

暫くすると女の方が話しかけて来た。

「お前英語はわかるかい?」

「少しならわかります。」

「まずお前に良い知らせと悪い知らせがある。
 お前は命が助かった。
 これが良い報せだ。」

『そんな事望んでなんか・・・』

「さて、これからが悪い報せだ。」

『何だろう?』

「この船は普通の船じゃない。
 まともな荷物も運ぶが密輸や人身売買絡みの非合法活動でもなんでもやる船だ。
 たまに他の船に押し込み強盗もやるから海賊船と呼ぶやつもいるがね。」

「そうなんですか。」

「お前みたいな上玉だったらうちのやつらがあっと言う間に
 ひん剥いて今でも相手をさせられてるんだが
 その首のおかげでお前は助かったのさ。」

『そんな事になったら1人でも多く巻き添えにして自殺を・・・』

「さすがに生首を抱えて満足そうにしてる女は異様に見えるらしくてね。
 あいつらも手を出しかねてたってわけだ。
 私はその首をとっとと捨てちまうつもりだったんだが
 このおいぼれがそれを止めたのさ。」

「やれやれ実の祖父に向かってなんて口の訊き方を。」

言葉は軽く老人に頭を下げた。

「私をどうするんですか?」

「さあてね?
 お前にはヨットっていう大層な手土産もあるし
 今の所は手下のエサにはしないよ。
 でも客扱いもしない。
 私の機嫌を損ねたら手下に散々弄ばせてから適当な所に寄港して
 売春宿に叩き売る事もあり得るよ!!」

どうやらこの船のボスはこの女で自分の命運も握られているようだ。

窓からは帆を畳んだ状態で曳航されているヨットが見えた。

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