行きかう思い42009-06-30 Tue 01:00
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←前へ 最初へ 次へ→ 翌日桂家リビングにて 昨日同様誠はいたるを連れて桂家にやってきた。 心にリビングに通されると正面には真奈美が座っていた。 言葉は真奈美の正面つまりこちらに背を向けて腰掛けていた。 真奈美はいたるを見つけると優しく微笑んで心と一緒に遊ぶように言った。 いたるが頷くと心はいたるの手を引いて二階に上がって行った。 一連の出来事に対して言葉は無言だったし何の行動も起こさなかった。 「よく来たわね誠君。言葉の隣にかけなさいな。」 「はい。」 言葉は誠がソファに腰掛けた途端に黙って体をずらして誠から一人分くらい距離をとった。 そしてずっとテーブルの上を見つめて誠を見ようとしない。 「私が何を言いたいかわかるかしら?」 「はい・・・」 誠がようやくと言った感じで答えた。 「誠君は何でこんな事を?」 「全ては俺の誤解からです。」 「誤解?」 「言葉に出した手紙の返事がなかなか来なくて 俺のことなんてもうどうでも良くなったのかと・・」 その誠の話を聞いて言葉がはっとして顔を上げた。 「そんな・・私は・・・」 「色々悩んで不安になってそうしているうちに妹のように思ってた娘達の 俺に対する気持ちがわかって来たんです。」 「で、その娘達に手を出したの?」 「いいえ。」 「でもそういう関係になることを了承したわよね?」 「・・・はい・・・」 誠はそのまま真奈美に叱責を受けることを覚悟した。 でも真奈美は 「言葉は何ですぐに返事を出さなかったの?」 とすぐに言葉に質問を投げた。 「だってその意味がわかってしまったから・・ それを誠君に知らせるのが怖かったから・・」 「結果として言葉にとって最悪の形で誠君がそれを知ってしまったのよね?」 「そんな!私が悪いの!?」 真奈美はそれにも取り合わないで今度は誠に 「でも誠君は手紙の返事が遅れたくらいでなんで言葉が そんな風に思ったと判断したの?」 と聞き返した。 「不安だったんです。言葉は俺には過ぎた存在だと思っていたし 終いには言葉が新しい恋人と一緒にいる夢にまで見てしまって。」 「私だって二条さんと誠君の写真を見たとき同じような夢を見ました。」 「えっ?写真って?」 そんなものを言葉に見せた覚えが無い誠は当然疑問に思う。 「いえ・・あのですね・・誠君のお手紙を貰って不安になった私は 心に二条さんの写真を撮ってくるように頼んだんです。 で写真を見て私の心配が確信に変わってますます返事が・・・」 「あれがそうだったのか・・・」 誠は心と二条姉妹のやり取りを思い出してげんなりしていた。 「本当に何やってんのよあんた達は。」 「・・・・・」 「・・・・・」 「それにしても誠君にはもう少し言葉を信じて欲しかったわね。 あなたを想って病気にまでなった娘なんだし。」 「はい。」 「誠君は反省してるみたいだけどもう言葉は誠君が嫌いになったのよね。」 誠は一瞬驚いたけれど悲しそうな目で言葉を見るしか無かった。 今の誠は言葉に嫌われても仕方がない。 でも思い直したようにこう言った。 「もう俺は言葉に嫌われても仕方ないけどせめて謝りたいんだ。 だから謝らせてくれ。 本当にごめん言葉。」 誠は言葉にそう言って頭を下げた。 「そう簡単に嫌いになれるなら苦労しません。」 「え?」 誠が顔を上げると言葉がじっと誠の顔を見ていた。 「誠君こそ私のことはもう要らないんですか?」 「そんな事無い。俺は言葉が好きだ。」 「もうこんな事は嫌ですよ?」 「本当に悪かったごめん。」 「はいはいご馳走様。 ”誠君のは違う”とか”信じられない”とか言ってたくせにまったくもう。 でも今の言葉ならもう大丈夫ね。 但し、こんな騒ぎは今回で終わりにしてね。」 真奈美はやってられないといった感じで席を立った。 誠は立ち去る真奈美の背中に黙って頭を下げた。 そして言葉の方に向き直ると 「”誠君のは違う”って何のことだ?」 と訊ねた。 「もういいじゃないですか。」 と言葉は明るく笑った。 FC2 Blog Ranking ←前へ 最初へ 次へ→ ↑目次へ |
行き交う思い32009-06-29 Mon 03:30
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←前へ 最初へ 次へ→ 言葉の部屋にて いたるが帰った後も言葉はさっきと同じ体勢でじっとしていた。 『なんでこうなったのかな?やっぱり距離かな?』 そこでロンドンで踊子から言われたことを思い出した。 ”男って基本的に浮気性だし遠くのご馳走より近くのお茶漬けって考えるものなの。” 可憐がお茶漬けかどうかはともかく誠が誘いに乗ったことに 言葉は少なからずショックを受けた。 『誠君までそうだったなんて・・・・これだから男の人って・・』 そう思うと以前の男性恐怖症が復活しそうな気がしてきた。 また涙が頬を伝わってくる。 同じ姿勢に疲れた言葉が体勢を崩して横になると不意に扉が開いた。 ノックすらなかった。 「心!ノックくらいしなさい!」 扉を見ようともしないで言葉は厳しくそう言った。 「あら親に向かって随分な言い方ね。」 「お母さん!?」 言葉は慌てて跳ね起きて扉の方向を見た。 真奈美はそんな言葉を呆れた様子で見ていた。 「何?泣いてたの?」 「別に・・・」 「誠君と喧嘩でもした?」 「喧嘩ならまだいい・・」 「さっき誠君と話したんだけど・・」 そこまで話すと言葉はピクッと少しだけ反応した。 真奈美はそんな言葉をじーっと見つめると話を続けた。 「なんか様子が変だったわね。 あんた達何があったの?」 「言えない・・」 「言えないって・・・」 「もう男の人なんて信じない・・・」 「なんか前にも聞いたわね、その台詞。」 「今度は誤解なんかじゃないし・・」 「誠君が浮気したの?」 「・・・・・」 「そうなんだ。」 「・・・・・」 「それで誠君はあんな風にオドオドしてたのね。」 「・・・・・」 「言葉が帰ってこっそり誠君の様子を伺ったらその相手といちゃついてたとか?」 「違う。」 「じゃあどうだったの?」 「宣戦布告された。」 「宣戦布告?」 「誠君の事が前から好きだったって。 私と違って誠君のそばにいられるしどんな事だって応えてみせるって。」 「その娘大したもんね。そこまで言ってのけるなんて。 言葉は何か言い返したの?」 「何も・・・」 「何もって・・」 「だって誠君はその娘とHする約束してたらしいの・・」 「えっ!?」 「邪魔が入って出来なかったらしいけど誠君はHする事に同意してたみたい・・」 「じゃあ未遂なのね。」 「でも誠君の心は私を裏切ってた。」 「確かにそういう言い方も出来るけど・・・」 「だから男の人なんて信じない。」 「そんな事言って一生一人でいるつもり?」 「こんな悲しい思いをするならそれでもいい。」 「男の人って言うけどお父さんだって男なのよ。」 「こういう事はお父さんだって信用できない。」 「言葉!!」 これにはさすがに真奈美も怒った。 「だって前に見ちゃったもん!お父さんの携帯が女の人からのメールで一杯なのを。」 「女の人?」 「何時に会いましょうとか、この間は楽しかったとか、来てねとか。」 「それって去年の話?」 「うん。去年リビングで偶然お父さんの携帯を見かけて。」 「アハハハハ・・」 「お母さん!?」 「あれってね。取引先の人にキャバクラに連れて行かれて そこの娘達になし崩しに携帯の番号とメアドを教えてしまったらああなったそうよ。」 「え?」 「何人かの女の子に同時に知られちゃったから大変だって言ってたわよ。」 「不潔・・・」 言葉の反応を見て真奈美は心底呆れてしまっていた。 「もう本当にわかってないわね。 あれは営業メールよ。 あの娘達は店からノルマを課せられたり 指名をもらうとバイト料が上乗せされるから必死なのよ。 だから向こうにとっては単なるお仕事なの。」 「・・・・」 「だからお父さんを信用しないなんて悲しい事言わないで頂戴。 あなたが入院した時に親身に看病してくれたでしょ?」 「うん・・でも・・」 「でも?」 「誠君のは違う。」 FC2 Blog Ranking ←前へ 最初へ 次へ→ ↑目次へ |
行き交う思い22009-06-15 Mon 02:00
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←前へ 最初へ 次へ→ 「私は泣いてませんよ。」 でもいたるは言葉にぴったりと身を寄せてもう一度言った。 「おねーちゃ泣いてるよ。おにーちゃのせいで・・・」 「・・・・」 「ごめんね・・おねーちゃ。」 「いたるちゃん・・・」 言葉はそう言っていたるをそっと抱き寄せた。 リビングにて 独りになった誠は今回の事を思い返してみた。 言葉がこんな感じに閉じこもってしまったのは愛との仲を誤解された時以来だ。 でも全てが誤解だったあの時と今回では全く違う。 誠は言葉を本当に裏切ってしまった。 実際に可憐との関係は未遂に終っても誠の心は確かに言葉を裏切った。 そして言葉はそれを知ってしまった。 誠は何の言い訳も出来なかった。 助けを求めるような言葉に対して何も出来なかった。 そもそもその資格すら無い様に思えた。 『どうみても俺のせいだよな。勝手に言葉が裏切ったと勘違いして・・・』 そして誠は真奈美とのロンドンでの会話を思い出した。 ”あなたも言葉もまだ若いわ。 離れ離れでずっと我慢するのは辛すぎない?” ”俺には言葉しかいません。 言葉が俺を嫌いにならない限り恋人をやめる気はありません。” 『大嘘つきが!!何なんだよ俺は!!』 自分がひたすら情けなかった。 「あら誠君じゃない。」 ソファで落ち込んでいた誠の背に久々に聞く声がかけられた。 それは今の誠がもっとも会いたくない人物だった。 再び言葉の部屋にて そのまま10数分が過ぎて言葉はようやくいたるを放した。 「ごめんなさい、いたるちゃん。」 いたるは黙って首を振った。 「おねーちゃ。」 「何ですか?」 「もうおにーちゃの事嫌い?」 「・・・・・」 言葉は何も答えられなかった。 そして黙っていたるを見つめるしかなかった。 「いたるの事も嫌い?」 「そんな事ありませんよ。いたるちゃんの事は好きですよ。」 それを聞いていたるの顔がパアッと明るくなった。 「じゃあいたるとは今日みたいに会ってくれるの?」 「はい。」 「良かった。おねーちゃに会えなくなるのは辛いもん。明日も来ていい?」 「いいですよ。」 「わかった。じゃあ今日は帰るね。」 いたるは手を振りながら言葉の部屋を出て行った。 リビングにて 階段を降りてきた心といたるが見たのは背を丸めて真奈美と話す誠の姿だった。 「おにーちゃ。」 そう声をかけたいたるに真奈美が視線を移すと 「あら可愛い。誠君の妹さん?」 と興味を示した。 「はいそうです。」 「この娘がそうなのね。お名前は?」 と真奈美は優しくいたるに問いかけた。 「いたる。」 「そう、いたるちゃんって言うのね。うちの娘とは仲良くしてくれてる?」 「うん。おねーちゃも心ちゃんも優しいから大好き。」 そう嬉しそうに言ういたるを真奈美はにこやかに見ていた。 「じゃあ折角だからご飯でも食べていきなさい。」 「今日はおうちに帰らなきゃいけないの。」 といたるは残念そうに言った。 真奈美は誠に視線を移した。 「この週末は面会日なんです。」 「面会日?」 と問いかけながら真奈美はふと思い当たったようだ。 「ごめんなさい。なら仕方ないわね。」 「すみません。」 「いいのよ。また近々来るんでしょ?」 そう問われていたるは 「おねーちゃ明日来ていいって言ってくれたよ。」 と答えた。 「でもお母さんと一緒にいなくていいの?」 「今日位の時間なら大丈夫だよ。」 「じゃあ待ってるから必ず来るのよ。」 そう言って真奈美はいたるの頭を撫でた。 「うん。」 「誠君もね。」 そう付け加える事も忘れなかった。 FC2 Blog Ranking ←前へ 最初へ 次へ→ ↑目次へ |
行き交う思い12009-05-25 Mon 01:00
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←前へ 最初へ 次へ→ 「(はい。)」 インターフォンに出てきたのは心だった。 「俺だけど。」 「(わかった。今開けるね。)」 5分後リビングにて 「やっぱりダメみたい。」 心が心底困りきった顔で誠といたるにそう告げた。 「そうか・・・」 「で、これ。」 そう言って心が差し出したのは免税店かどこかで買ったらしい 言葉からの土産物だった。 それは誠といたると誠の母宛なのだろう、包みは3つあった。 「バッグ自体は大した物じゃなかったし結局誠君はこれをもってくる必要はなかったみたい。」 「でもそういうわけには・・」 「そうだね。お姉ちゃん何の説明もしてなかったんだろうしね。」 「ああ。」 その誠の返答を聞いてここまで比較的落ち着いて話していた心の表情が厳しいものに変わった。 「でもお姉ちゃんが説明すら出来ない状況になったのは何で!?」 「ごめん・・」 「昨日からずっとそれ!いい加減飽きたよ!」 「・・・・・」 「何で私に話してくれないの!!誠君!!」 「ごめん。いたるや心ちゃんの前ではどうしても話せないんだ。」 誠は本当に辛そうに言った。 「じゃあもう帰って!!誠君なんてもう知らない!!」 そう叫んだ心の表情には怒りと言うより真実を明かしてもらえない悔しさが滲み出ていた。 「わかった帰るよ。」 そう言って立ち上がろうとした誠のズボンの裾をいたるが掴んだ。 「どうした?いたる。」 誠がいたるの顔を覗き込むと今にも泣きそうな顔をしている。 心もそれに気付いて慌てていたるの側に駆け寄ってきた。 「おねーちゃ・・・」 いたるはポツリとそう言った。 「心ちゃん、いたるだけでも言葉に会わせてくれないかな?」 「いたるちゃんだけ?」 「ああ、今回の事はいたるには何の関係も無いんだ。」 「そんな事わかってる。いたるちゃんが何かするわけないもん。 お姉ちゃんに訊いてくるよ。」 そう言って心は再び二階に上がって行った。 3分後 「いたるちゃんだけなら良いって。」 1階に下りてきた心が誠達にそう告げた。 「行って来いいたる。」 「うん。」 そう答えたいたるは心に手を引かれて誠の方を何度も振り返りながら 二階へ上がって行った。 言葉の部屋にて 心がいたるを連れて部屋に入ると言葉はベッドの上に膝を抱えて座っていた。 顔を伏せている上に彼女の長い髪が邪魔をしてその表情を伺う事は出来なかった。 「おねーちゃん。いたるちゃん連れてきたよ。」 「うんわかった。心は出て行って。」 と言葉は顔を伏せたままそう言った。 「ちょっとそれは無いんじゃない?」 「いいから。」 声は決して大きくは無いけれどピシャリとそう言われるとさすがに心も逆らえなかった。 「じゃあ済んだら呼んでよ。」 「うん。」 心が出て行くとようやく言葉が顔を上げてこう言った。 「いらっしゃい。いたるちゃん。」 再びリビング 戻ってきた心は誠と向かい合って黙ってお茶を飲んでいた。 でもやはり沈黙に耐えられず口を開く事になる。 「誠君。」 「何だい?」 「理由を話してくれないのは仕方ないのかもしれないけど これだけは聞かせて。」 「・・・・・」 「悪いのはお姉ちゃんなの?誠君なの?」 誠はこれだけは答える必要を感じた。 いたるだけでも言葉に会うことが出来たのは心のおかげだからだ。 「俺が悪い・・」 「誠君だけが悪いの?」 「ああ。」 「そう・・」 心は何かを考えているようだったけれど、やがてそれにも飽きたのか 自分の部屋に戻っていった。 再び言葉の部屋 言葉は精一杯いたるに笑いかけた。 でもそれは寂しそうで辛そうで誰でも痛々しさを感じる事が出来る そんな笑顔だった。 いたるはベッドに上がると言葉の横に並んで座った。 「おねーちゃ。」 「なあに?」 「ごめんね。」 「え?」 「おにーちゃが悪いんでしょ?」 「いたるちゃん・・・」 「本当にごめんね。」 そう言っていたるは言葉の腕に手を置いた。 「いたるちゃんが謝る事じゃないですよ。」 「でも・・・おねーちゃ泣いてる。」 FC2 Blog Ranking ←前へ 最初へ 次へ→ ↑目次へ |
彼氏の資格62009-05-07 Thu 00:00
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←前へ 最初へ 次へ→ 誠の部屋にて いたるは誠を一睨みすると無言で誠の手を引いてここに連れてきた。 誠は困っていた。 いたるは確かに我侭ではあるけれど今回はいつものそれと違っていたからだ。 そしていたるはまだ誠を睨みつけている。 「どうしたんだいたる?」 「おねーちゃは?」 「言葉なら帰ったって言ったろ?」 「何で?」 「何でって・・・」 誠がそこまで言うといたるの目から涙が零れた。 そして表情も怒りから悲しみにみるみる変わって行った。 「いたる?」 「あの時と・・同じなの・・・」 「あの時って?」 「お母さんの前に・・・女の人が来て・・・いたるはお母さんに・・・ ”あっちに行ってなさい”って言われて・・・それからなの・・・ お父さんとお母さんの仲がもっと悪くなって・・・離婚して・・・ いたるはおにーちゃと・・一緒にいられなくなっちゃった・・・」 「いたる・・」 「あの女の人・・・よく遊びに来てて・・・お父さんのお友達って言ってたのに・・・ いたるに優しかったのに・・・いつも御菓子くれたのに・・・ お母さんに会ったら・・・怖くなってた・・・ 今日の可憐お姉ちゃんも・・・同じだった・・・」 そこまで言うといたるは誠にしがみついた。 「もうやだよ!優しかった人が怖くなるのも! 誰かとお別れするのも!」 もうそこが限界だった。 いたるは泣き疲れて眠るまで誠にしがみ付いてずっと泣き続けた。 誠はそんないたるに何も言えなかった。 誠はいたるをベッドに寝かせると部屋の隅に置いた言葉のバッグに目をやった。 『どうしたもんかな・・・』 そう思っていると誠の携帯に着信があった。 表示は”桂言葉自宅”。 当然誠はすぐに取った。 「もしもし?言葉か?」 「(私だよ誠君。)」 抑揚の無い声は心のものだった。 「心ちゃん・・」 「(お姉ちゃん真っ青な顔をして帰ってきたんだけど何があったの?)」 「・・・・」 「(答えてよ誠君!)」 「ごめん・・」 「(ごめんって・・・)」 「言葉とは話せないか?」 ここまで言って誠は後悔した。 『バカか俺は!言葉は全てを知ってしまったんだぞ!今更何を言えば・・・』 でもそれは杞憂に終わった。 「(無理だよ。お姉ちゃん何も答えてくれないし部屋にはカギかかってるし。)」 「そうなのか。」 「(今回もお姉ちゃんの誤解なんでしょ?そうなんでしょ!?)」 「・・・・」 誠は答えられなかった。 「(ねえ誠君答えてよ!)」 「・・・・」 「(言い訳の一つ位してよ!ねえったら!)」 「ごめん。」 誠はそれだけ返すのが精一杯だった。 「(酷いよ誠君!!誠君なんてもうお姉ちゃんの彼氏の資格なんて無いよ!!)」 心はそのまま受話器を叩きつけて切ろうとしている。 誠は実際にその様子は見えないけれど察する事は出来た。 そしてそれが実行されるとこのまま言葉との関係が全て断ち切られるような気がしたのだ。 「ちょっと待ってくれ心ちゃん!」 「(何よ!!)」 「言葉が忘れ物をして行ったんだ。」 「(忘れ物?)」 「ああ、言葉が肩からかけてたバッグだよ。」 「(そう・・)」 「明日届けに行っていいかな?」 「(お姉ちゃんに会えるとは限らないよ?)」 「それでも行きたいんだ。」 「(わかった。)」 そして電話はそのまま切れた。 翌日桂家前にて 誠はいたるを連れて桂家を訪れた。 最初は誠だけで来るつもりだったけれど、 いたるがどうしても来ると言い張ったのだ。 でもインターフォンのボタンを押す勇気がなかなかでない。 「ねえおにーちゃ?」 「何だ?」 「心ちゃんやおねーちゃに会えるかな?」 「多分な。」 「多分?」 いたるの顔が益々不安げになった。 誠はその様子を見てようやくインターフォンのボタンを押した。 FC2 Blog Ranking ←前へ 最初へ 次へ→ ↑目次へ |








