その他もろもろ

小説やアニメを見ていて感じた自分なりのIfを表現してみようと思います。

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心情

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「何するの?」

刹那が赤みがかった独特の瞳でいたるを見つめてくる。

「話だけでも聞きたいと思って。恩返しって言うか何て言うか。」

いざ話してみるといたるには適当な言葉が見つからなかった。

流石に現状では誠は近いうちに山県と結ばれ、その誠はこの場にすらいないなんて言えるはずも無かったからだ。

でもいたるの真摯さが伝わったのか刹那は

「とりあえず放して。でも聞いてて面白い話じゃないよ。」

と言ってきた。


いたるは黙って頷き、そして刹那は語り始めた。

「あるお客さんがいてね。私はその人の要望に全然答えられなかったの。」

「どんな人なの?」

「多分私のお母さんと同じくらいの年だと思う。
 すごく胸が大きくて綺麗で雰囲気はいかにも仕事が出来そうな感じの人。」
 
『なんか年や外見はおば様みたい。でもまさかねえ?』


「でもファミレスって言うか海の家だっけ?そのレベルで色々言ってくる方もどうかしてると思うけど。」

「ラディッシュをバカにしてるの?」

と刹那の目が細くなる。

「違うの!そんなのは何万円もする料理を出すような店で言うべきじゃないかなって。
 何て言うかほら、メインの料理注文したらこの料理にはこの飲み物とかサイドメニューが合います。
 って感じでギャルソンとかがアドバイスくれるようなお店。」
 
刹那はいたるをじっと見つめてため息をついた。

「実はうちがそれに近い。」

「え?」

「踊子さんが考えたメニューはかなり複雑で組み合わせとか何十通りにもなる。
 だからお客さんの質問や要望にこちらもちゃんと答えなきゃいけないの。」
 
「ひょっとしてお勧めする理由とかも?」

「うん。」

「げっ何それ!
 だから昨日メニュー見て勉強してたの?」
 
刹那は黙って頷いた。

いたるは踊子に強引に誘われなくて良かったと心底思った。


「それってウエイトレス全員がこなしてるならすごいね。
 低料金なのに高級店並のサービスって事でしょ?」

「こなせてるのは踊子さんだけ。」

「え?」

「私はそれに加えて初めて日が浅いから、基本的な接客すら出来てない・・・
 笑顔がぎこちないって言われたり、客あしらいも下手だからお尻触られたり・・」
 
「お尻って!それ犯罪じゃん!
 男も女も酷い客しかいないのか!」

「大体のお客さんは普通に食べて普通に帰ってくれる。
 こだわりの強い人やタチの悪い人はほんの一部。」

 
「所でさあ、そのこだわりの強い女の人の接客を先輩に代わってもらうことは出来ないの?」

刹那をそれを聞いてため息を一つついた後

「あのお客さんは先輩たちに私専用って決められちゃって・・・・」

「まるでイジメだね。ルックスはいいけど中身は卑怯者の集まりなんだね。」

いたるは今朝のラディッシュの光景を思い出した。

みんな美人でスタイルも良くて愛想よさげに見えた。

だから外観と中身のギャップに少なからず驚いていた。

「うん・・ただあのお客さんは間違ったことは言ってない。
 だから鍛えてもらってると思うことにしたの。」
 
「すごいね刹那さん。私はそこまで思うことは出来ないよ。」

いたるは刹那の強さを始めて見た気がした。


「でもね。それだけじゃやっぱり辛い。
 だからここ何日か伊藤に話を聞いてもらってた。」
 
「約束してたのにいないの?」

刹那は無反応だった。

でも約束以前に誠に話を聞いてもらうことが今の刹那にどれだけ必要なことなのか、
今のいたるにはよくわかった。

『我が兄ながらあのバカモンが〜!!』

突如としていたるの背中から炎が見えたような気がして刹那は一瞬だじろいだ。

「あ・あの・・今日のことは別に・・いのりさんに話を聞いてもらってだいぶ落ち着いたし・・」

「本当?」

「うん。」

そう言って刹那は自然に微笑んだ。


いたるは違和感を感じて周囲を見回した。

辺りはすっかり日が落ちてもう真っ暗だった。

「大変!もうすっかり日が暮れてる!
 駅まで一緒に帰ろう刹那さん。」
 
「う・うん、今日はうちに帰らないの?」

「今日からバイト先の神社に寝泊りすることになったの。」

「とりあえず宿無し卒業おめでとうでいいの?」

「ありがとう、でもそんな事よりさっきはいい笑顔だったよ。」

「そ・そう?」

そう言って刹那は頬を赤らめた。


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記憶

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いたるが急いで外に出ると誠と昔の自分が手を繋いで商店街の方に向かっている姿が見えた。

どうやら二人は今晩の食材でも買いに来ているようだった。

昔の自分を改めて見てみると本当に嬉しそうで誠といられる事を心から喜んでいるようだった。

『そう言えば小さい頃ってお兄ちゃんとこうして外に出かけるのが本当に楽しみだったな。』

後をつけながらいたるはそう思った。


『所でコトノハサマ、ちょっと教えて欲しいんだけど。』

「(何?)」

『山県さんがお兄ちゃんと結ばれるいきさつを少し詳しく。』

「(いたるちゃんに助けてもらった山県さんは一念発起したの。
 折角いたるちゃんに助けてもらって受付に張付けられずに済んだんだからもっと頑張らなきゃって。)」
 
『え?がんばるって?』

「(あの二人は中学の頃に相思相愛だったみたいなの。
 でも加藤さんにいたるちゃんのお兄さんが騙されて変な形で別れちゃったみたい。)」
 
『それでお兄ちゃんは山県さんといる時は複雑そうにしてたんだね。』

「(今回の神社の仕事を逃れた事でお祭の日に自由が利くことになった山県さんはその夜にお兄さんと結ばれたの。)」

『じゃあそれまでに手を打たなきゃね。』

「(そういう事。)」


誠と昔のいたるは商店街で色々と食料品を買い込んで海岸通の誠のマンションに向かっているようだった。

そしてエントランスに入ろうとした所で愛が誠を呼び止めて二言三言話すと手を振って帰っていった。

『なんかこう着々と進行してる感じだね。』

「(うん。そうだね。)」

『今日はこれ以上進展なさそうだからラディッシュに寄って帰るね。』

「(わかった。)」


もう殆ど日が暮れて、いたるがラディッシュに向かって海岸通を歩いていると正面から小さな人影が近づいてきた。

『キオウラ・・違った。刹那さん。』

いたるは少し話をしたかったので立ち止まって刹那が近付くのを待った。

でも伏目がちな刹那はいたるに気付かないでそのまま通り過ぎて行った。

気のせいか刹那の目には涙が浮かんでいるようだった。

いたるは10年前にも同じ様な事があったと思い出した。

『あの時の刹那さんはお兄ちゃんに何か言いたげだったけど言い出せそうになかったから
 私が足にしがみついて引きとめたんだよね。』
 
当事のいたるには何の事情なのかはわからなかった。

でも刹那は誠と話すたびに段々と元気になって、いたるとも仲良くなっていったのだ。


いたるは近くに迫ったラディッシュと後方に去っていく刹那を見比べて暫く考え込んだ後、
踵を返して刹那を追う事にした。

いたるは走って追いかけようかとも思ったけれど、刹那の様子が気になったので一定の距離を置いてついて行った。

暫くすると刹那は誠のマンションの近くの砂浜へ行き着いて左右を見回していた。

でも海岸に目的の相手はいないらしく明らかに落胆している様子が見て取れた。

『あの時と同じだ。』

いたるが小さい頃に見たそのままの刹那がいた。

あの時同様刹那はとても悲しそうで誰かの助けを必要としているように見えた。

誠のマンションを見ても誠と昔の自分が出てくる気配はない。

『そうか山県さんとさっき会ってたから・・』


いたるはゆっくりと刹那に近付いていった。

「刹那さん。」

刹那は一瞬期待に満ちた目で振り返ったけれど相手がいたるとわかると更に落胆したようだった。

「何?」

とポツリと刹那が聞いてきた。

「何かあったの?」

「あなたには関係ない。」

「でも悲しそうだよ。」

「私帰る。」

そう言って帰ろうとする刹那の手をいたるは擦れ違い様に掴んだ。

10年前の自分が刹那の足にしがみついて引きとめたように。


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変化

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『え?じゃあ元通りになったの?』

「(違うよ。山県って人がいたるちゃんのお兄さんと結ばれちゃって・・)」

『お姉さんじゃないんだ・・ってたったあれだけの事で!?』

「(ちょっとした事が大きく物事を変えちゃうの。それはいたるちゃんが一番実感してると思うけど。)」

『うん、そうだね。だから私がここにいるんだし。』

「(ただねえ・・やっぱり殺されちゃうのよね。)」

物騒な内容にも拘らずコトノハサマは落ち着いた感じだ。

『お兄ちゃんが!?何で!?』

「(山県って人と同時並行で西園寺って人といつの間にか付き合いだしてそれがもつれて・・・)」

『我が兄ながら最低・・ねえ修正は効くの?・・』

「(うん、いたるちゃん次第だよ。)」

『だからコトノハサマは落ち着いてたんだね。わかった、なんとかやる気出た。』

といたるが気を持ち直していると後ろから肩をポンと叩かれた。


「わっ!」

いたるが驚いて振り返ると先輩巫女がニヤニヤ笑いながらこちらを見ていた。

「なーにさっきから一人で上を見ながら唸ったり百面相したり。」

「え、あのー・・二人ともここに出ちゃってるって事はひょっとして社務所空ですか?」

さすがにそれはまずいといたるは社務所に駆け戻ろうとした。

「そう慌てなさんな。」

そう言いながら先輩巫女はいたるの肩を掴んだ。

「え?」

「私は上がり。交代要員はもう来てるし缶コーヒーくらいなら奢ってあげるから付き合いなよ。」

「でも私はまだ一時間あって・・」
 
「はいはい。」

結局いたるはそのまま休憩所まで連れて行かれてしまった。

十数分後社務所に戻り謝罪したいたるに対してかけられたのは叱責の声ではなく

「お疲れ様。あの娘話しだすと長いのよね。」

と言う同情の声だった。


結局いたるは神主の強い要請で祭の前日まで神社に寝泊りすることになった。

いたるとしては世界の動向も気になるし刹那とじっくり話をしたかったけれど
誠を初めとしたキーパーソンはこの周辺に多かったからここにいる必要があった。

それに刹那はバイトのシフトに入っていればこの町にいる。

ラディッシュに行けば踊子にも刹那にも会うことが出来る。


初日のバイトを終えると約束通り神主はバイト料を日払いしてくれた。

いたるはそのお金を持って大型スーパーに買い物に来ていた。

『とりあえず下着類だけでもなんとかしないとね。』

そう考えながら商品を選んでいるといきなり背後から

「あーっ、このおねーちゃいたると同じ髪型だあ!」

と声が聞こえた。

『やばっ!昔の私?』

そう思いながらそーっと振り返るとワゴン二つくらい先に
いたると同じ様に黒髪をツインテールにした少女が
こちらに背を向けて立っていた。

少女は前屈みになると昔のいたるの頭を撫で始めた。

昔のいたるも

「えへへ。」

と撫でられて喜んでいるようだった。

『この隙に距離をとらなきゃ。』

いたるは気付かれないようにすーっと距離をとって二人の様子を伺っていると
誠がやって来て昔のいたるを連れて行った。

少女は手を振って昔のいたるを見送っているようだった。


『このままじゃ埒が明かないからおにいちゃんと私の後をつけてみるね。』

「(わかった。気をつけてね。)」

いたるは急いでレジに向かって精算を済ませると誠と昔の自分を追って店を出た。


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境内

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いたるの見ていた先には誠と乙女と可憐と愛の4人がいた。

いたるにとっては誠以外はどれも懐かしい面々だった。

どうやらみんな夏祭りの準備に集まってきたらしい。

『相変わらずお兄ちゃんの周りは女の子ばっかりよね。』

誠を中心にして何やら話していたけれど、用事でもあったのか誠は集団から離れてその場から立ち去った。

『おにいちゃんは何か用事かな?それより私は近くにいないわよね。』

そう思いながらいたるはキョロキョロと辺りを見回した。

そして視線を集団に移すとさっきとは明らかに様子が違っていた。

乙女の態度がガラリと変わって愛に詰め寄り何かを高圧的に要求しているようだった。

『うわー何言ってるんだろ?山県さん可愛そうに。』


「ねえ、そんなに気になるの?」

「わっ!」

隣に座っていた先輩巫女にいきなり訊ねられていたるは飛び上がりかけた。

「あはは、ゴメンゴメン。
 あなたもいのりちゃんだったわよね。
 なあにさっきの男の子、いのりちゃんの彼氏か何か?」

「いいえ、とんでもない!」

「そうなんだ?じゃあ女の子たちと知り合いなのかな?
 でも見てると男の子とも因縁浅からぬって感じなんだよね。」

そう言いながら先輩巫女はいたるの方に身を乗り出してニヤリと笑って見せた。

この先輩巫女は女子大生のアルバイトで黙って座っていたらとても清楚で穏やかな和風美人に見える。

でも今取ってる態度は外見とはかけ離れてしまっている。

喋ったり動いたりすると台無しになる典型的な人物のようだった。

『勿体無い人だなあ。』

「気になるなら休憩がてら行っといで。」

「え?いいんですか?」

「いいからいいから。その代わり巫女服汚しちゃダメよ。」

「はい。」

『いい人ではあるんだよね。』


『とにかく山県さん可愛そうだから助けに行こう。
 仲良くなったら何か情報もらえるかもしれないし。』

そう思いながらいたるは愛や乙女達の所に向かっていた。

ふと後ろの社務所を振り返ると先輩巫女が親指を立ててウインクをしてきた。

『だから似合いませんって。』

やがていたるは愛のすぐ後ろに辿り着いて声をかけた。

「あのう。」

「何?」

乙女がギン!と音が出そうな感じでいたるを睨んできた。

『こ・こわー、そういやこの人には天井にぶつけられたっけ。』

幼い頃のいたるは本気モードの乙女に睨まれた事は無い。

天井に誤ってぶつけた一件からどちらかと言うとおっかなびっくりで接してきていた。

だから余計に恐怖感があった。

「だから何!?」

今度は怒気を5割増しにしてもう一度聞いてきた。


「あのう・・ここは神前ですので言い争いはやめて頂きたく・・」

いたるは震えがらようやく言った。

乙女は値踏みするようにいたるを見た後本殿を見て

「悪かったわね。可憐帰るよ。」

とそう言って可憐を連れて境内を出て行った。

いくら乙女でも神前で巫女相手に大立ち回りはやれないようだ。

『よかったあ。巫女服に助けられたみたい。」

そう胸をなでおろしていると

「ありがとうございます。おかげで助かりました。」

と愛がいたるに頭を下げてきた。

「いえいえ。」

いたるがそう返すと愛はもう一度いたるに一礼して境内を出て行った。


その直後いたるの頭の中に

「(いたるちゃん、様子が変わったよ。)」

と言うコトノハサマの声が響いた。



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珍客

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「交通安全のお守りですね。500円お納めください。」

「ご参拝ご苦労様でした。」

今日のいたるは社務所でお守りなどを買い求める参拝客達に対してこの様な挨拶を何度も繰り返した。

『ここで巫女服着て座ってるなんて朝ご飯の時には想像も出来なかったな。
 まあいいか。お金も日払いでくれるみたいだし、クーラーも効いてるし。
 それにターゲットもいるし。』
 
いたるの目はある一点を見つめて鋭くなった。


話は朝まで遡る。

清浦家を訪ねた踊子はいたるの様子を見るついでに刹那を連れてラディッシュまで行くつもりだった。

でも舞がいたるを料理人のアルバイトにスカウトしてたのですぐに止めに入った。

踊子はいたるを舞に取られるのは嫌だったので強引に刹那とともに連れ出して
ラディッシュの海岸通店まで連れてきたのだ。


そして従業員控え室でのミーティングの最後にいたるは見学者として紹介されることになった。

「この娘は足利いのりちゃん。今日は見学に来たの。
 だからみんな気にしないでね。」
 
「はーい。」

アルバイトのウエイトレス全員の声が響いた。


その後いたるは踊子から事務室で備え付けの雑誌でも読むように言われた。

確かに今は言う通りにするしかないのだが、暫くすると退屈で飽きてきた。

程よい室温に今までの気苦労による疲れも加わっていたるは椅子に座ったまま眠りかけた。

でもバタン!と言う激しいドアの開く音と

「いのり!!」

と言う中年男性の大声でいっぺんに目が覚めた。

「え?」

いたるとその男性の目が合って見つめあうと、男性の顔に明らかな落胆の様子が見て取れた。

扉の音を聞きつけた踊子と男性を追ってきた野杏が飛んできたけれど男性は見向きもしなかった。


暫くしてなんとか落ち着きを取り戻した男性は踊子といたるに事情を話し始めた。

「実はうちの娘が昨日家出しましてね。
 未だに全く連絡が取れません。
 ですからこうして心当たりを探しているのです。」

「それは大変でしたね。よろしければ理由をお聞かせください。」

踊子にとっては同じ娘を持つ親として気になるようだった。

「私は神主をしているのですが、娘も良い年になったので許婚の存在を知らせたのです。
 そうすると怒り狂ってそのまま家を出てしまいまして・・・」

「お相手は同じお仕事の方ですか?」

「はい。懇意にしていただいている神社の跡取り息子さんでして。」

「そうなんですか。」

流石にこれ以上は失礼になると思ったのか踊子はその程度の返答に留めておいた。

「さっきここのウエイトレスさん達が立ち話でいのりと言う私の娘の名をおっしゃてたので
 まさかと思ってお聞きしたら特徴が良く似ていたので期待していたのですが・・」
 
そう言いながら神主はいたるをちらりと見た。

でもいたるとしては勝手に期待されて勝手にガッカリされても困る。

『全くもう何なのよ一体。』

「実は祭を前にして人手が足りない上に、当日の神楽舞の踊り手がいなくなったので困り果てているのですよ。
 それと親戚が祭の前の日に久々にいのりを見に来るようで・・」

そして改めていたるを見た。

今度は上から下までじっくりと。

『な・なんかやだな・・』

「どうです?うちでバイトしませんか?」

「は?」

「あなたの今の髪型は普段のうちの娘とそっくりだし、背格好も良く似てます。
 だからうちでいのりの振りをして頂きたいのです。」

「ええっ!?私神社のバイトの経験もないですし神楽舞なんて踊れませんよ!?
 それに親戚の方にはすぐばれるんじゃ?」

「いのりが前日までに戻らなければ他の神社から代役を連れてきます。
 あなたはそれまで娘の振りをしてくれればいいんです。
 それに親戚も10年振りにいのりに会うのです。わかりはしません。
 バイト代も弾みますし、何でしたら日払いだってします。」

『うーん、お金が必要なのは間違いないのよね。』

いたるは何となく踊子の顔を見た。

「いのりちゃんを手放すのは本当に惜しいけどいってらっしゃい。
 条件もよさそうだし、何より困ってらっしゃるわ。」

踊子はいたるに優しくそう言った。

「神主さん。」

「はい。」

「この娘の素性については根掘り葉掘り聞かないでくださいね。」

「は・はあ、わかりました。」

踊子はいたるから何かを感じ取っていたようだった。


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