合宿後始末記2009-10-30 Fri 03:00
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←前へ 最初へ 次へ→ 「お姉!?何で?」 そう言うと可憐は二三歩後ずさった。 「可憐!あんた私に嘘ついたね!?」 「ひいい。」 と乙女のあまりの迫力に双子まで一緒たじろいだ。 「あんたがお世話になってるからって昨晩お母さんが作ったおかずの お裾分けに来てみたら、あんたもその二人もここにはいないし、 その上おばさんに嘘つくように頼んでたんだってね!」 可憐がおばさんつまり双子の母親の方と見ると おばさんは可憐に手を合わせて謝っていた。 「全く聞き出すのに苦労したんだから。」 乙女はやれやれといった感じでおばさんを見ていた。 昨晩乙女は母親から頼まれた鍋を持って二条家を訪れた。 でも玄関に可憐の靴は無く、双子がいる様子も無い。 昼に可憐の携帯に電話をかけた時も何か様子がおかしかった。 双子の母親が”コンビニにでも行っている”と即座に言えば誤魔化せたのかもしれない。 でも彼女は空気を吸うように嘘をつくタイプではなかったので乙女に追及を受けて 今回のことがバレてしまい、こうして待ち伏せを食らってしまったのだ。 「とにかく可憐帰るよ!」 乙女は可憐の首根っこを掴むと玄関から外に引っ張り出そうとした。 「ちょちょっと待ってよお姉!おばさんにお土産渡さなきゃ。」 家に帰ると地獄が待っているので何とか引き伸ばそうと可憐も必死だ。 「じゃあとっとと出しなよ。」 「ここじゃあれだから・・・リビングで渡そうかなあって・・」 「はあ!?寝ぼけてんの?あんた。」 どうやら火に油のようだ。 可憐は慌てておばさんへのお土産を荷物から取り出して渡した。 それが終わった途端にものすごい力で可憐は外へと引っ張り出された。 二条家の面々はそれを呆然と見送るしかなかった。 恐らくもう可憐は天文部にはいられないだろう。 退部届けは可憐本人ではなく乙女から双子を通じて渡される事になりそうだ。 A高原の民宿にて 可憐達と顧問が帰ったので誠は荷物ごと言葉の部屋へ移動していた。 そこは誠達が可憐達が来る前の晩に泊まっていた部屋で 二人はお茶を飲みながらのんびり休んでいた。 「うーん、やっと帰ってきたって感じだな。」 「フフフ、なんかそれも変ですけどね。」 言葉は笑いながらそう答えた。 「でもここが一番落ち着くよ。」 誠はそう言って言葉の膝枕に頭を乗せた。 「気持ちいいですか?」 「ああ。」 実際に誠の頭に伝わる言葉の膝の感触はとても心地よかった。 「ここって去年来たのと同じ部屋なんだな。」 「そうですね。あの時と違って今回は本当に楽しめました。」 「言葉は可憐たちに押し倒されたりして大変だったけどな。」 「まあそうですけど・・・でもあの時に比べたら 今回はとてもリラックス出来ましたよ。」 「そうだな。」 確かにあの時の二人はただただ別れが悲しくて 行く先々が真っ暗で何も無い様に思えた。 「でもまた長いお別れが近付いているんですよね。」 この夏が終わればまた言葉はロンドンに帰らなければならない。 言葉の胸の内に言いようの無い寂しさが広がっていく。 「・・・・・」 「誠君?」 言葉が覗き込むとここ数日の疲れが出たのか誠は膝枕で寝息を立てていた。 「もう、夜眠れなくなっても知りませんよ。」 そう言いながら誠の頭を撫でていた言葉だったけれど やがて誠に釣られるように寝入ってしまった。 翌日車中にて 誠と言葉は来た時と同じ様に係員の運転する車で駅に向かっていた。 係員は何かが気になったのかルームミラーをちらっと見た。 そして 「ねえ二人とも。」 と声をかけた。 二人が係員のほうを見ると 「夕べはお楽しみでしたね。」 ととんでもない一言が飛んできた。 二人は絶句して顔を真っ赤にしながら俯いてしまった。 「やっぱりね。あはははは。」 「これっ、からかっちゃダメよ。」 そう言いながらもオーナーも笑いをこらえるのに必死な様子だった。 駅の改札前にて 「はい、これお弁当。列車の中でお食べ。」 そう言ってオーナーは前回同様二人に弁当を持たせてくれた。 「二人とも元気でね。」 と係員も言ってきた。 「はい。お世話になりました。」 と誠と言葉も頭を下げてから改札に入った。 列車にて 「やっぱりいい人達でしたね。」 「そうだな。」 「じゃあ折角だから弁当を食うか。」 そう言って誠が弁当を開けると前回同様手紙が入っていた。 その内容は ”今年も二人に会えて嬉しかったよ 実は来年から私が民宿を継ぐ事になったんだ 今のオーナーのおばちゃんもまだ引退するわけじゃないから 来年も絶対来なさいよ また格安料金で待ってるからね” となっていた。 「だそうだぞ。また来年も行こうか?」 「そうですね。」 FC2 Blog Ranking ←前へ 最初へ 次へ→ ↑目次へ |
夏合宿72009-10-21 Wed 02:00
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←前へ 最初へ 次へ→ その夜展望台にて 「全く可憐のやつこの合宿の言いだしっぺの癖に・・」 誠が後ろを振り返って一向に現れない三人組を嘆いていた。 「まあいいじゃないですか。私はこの方が嬉しいですし。」 そう言って言葉は誠に腕を絡めた。 「そうだな。望遠鏡は明日には先生が持って帰ってしまうから 今日よく見ておかないとな。」 「はい。」 その頃民宿では 可憐達三人は朝から温泉に浸かりすぎて湯疲れを起こして寝ていた。 それに本来睡眠をとる時間帯でもあるので誠が様子を見に行っても 何の返答もなくて起きてくる様子は全くなかった。 恐らく朝飯まで目を覚まさないだろう。 再び展望台 「そう言えば言葉が去年着ていた赤いワンピース綺麗だったよな。 あれはもう着ないのか?」 「意地悪です。」 言葉が膨れっ面で誠を見上げていた。 誠はそこで気がついた。 「ああそうか胸が・・」 「言わないでください。」 「悪かったよ。でも言葉と付き合う前に一番印象深い格好だったからさ。」 「私自身は派手目かなって思ってたんですけどね。 でもこの夏が終わったら私達が知り合って一年になるんですね。」 「そうだな。去年の今頃は言葉は憧れの対象でまさかこうして 俺の彼女になってくれるとは思わなかったよ。」 そう言って誠は言葉を抱き寄せた。 「そんな。所で誠君、来年の夏もここでこうして私と過ごしてくれますか?」 言葉も誠の胸に額をつけた。 「ここはいいところだしな。毎年来るのもいいかもな。」 「もうこの間のようなことは嫌ですよ?」 言葉が上目遣いに誠を見ていた。 でも甘えたような様子ではなくて本当に真剣な目つきで見上げていた。 「あ・ああわかったよ。」 誠は言葉の様子にたじろぎながらも何とか返事を返すことが出来た。 「ならいいです。」 言葉はやっと安心したような表情になって誠からスッと離れた。 「誠君、望遠鏡は今日で最後なんですよね?」 「ああ。」 「じゃあじっくり観察しましょうか?」 「そうだな。」 翌朝食堂にて 「うーん。温泉にじっくり浸かることが出来たしよく眠れた。」 可憐が背伸びをしながらそう言うと 「そうだね。温泉もじっくり入るといいもんだね。」 と二葉も続いた。 「可憐ちゃんも二葉ちゃんも年寄り臭いよ。」 三人は観測の事などもう頭に無い様子だった。 『やれやれ。』 誠と言葉は顔を見合わせて苦笑するしかなかった。 暫くすると顧問が食堂に入ってきて 「加藤と二条達三人は10時の列車だったな。 駅まで乗せていくから早めに準備しろよ。 伊藤も望遠鏡をトランクに積んどけ。」 と言った。 「はーい。」 「わかりました。」 可憐達と誠はそれぞれ返事をして顧問と一緒に食堂を出ようとしたら 言葉が誠の袖を掴んで引き留めて 「誠君、私達は夕方帰るんですか?」 と訊いた。 「俺達は明日の夕方だよ。」 「じゃあ今夜は・・」 言葉の頬がわずかに赤く染まった 「そうだな。」 誠も少し照れていた。 その日14時頃二条家付近にて 可憐達三人はA高原からようやく戻ってきた。 「いい旅行だったけど伊藤先輩は諦めた方がよさげだね。」 「そうだね。」 そんな双子とは対照的に 「私はまだ諦めないよ。あの人はすぐにまた留学先に戻るんだし。」 と可憐は諦めきれない様子だ。 双子はもう何も言えず可憐を呆れた目で見つめるしかなかった。 「所で可憐ちゃんうちに何か用?」 可憐が家までついてきてるので一葉は不思議がってるようだ。 「おばさんにアリバイ工作頼んでたからね。だからお土産をちゃんと渡さないと。」 「アリバイ工作?」 「うん。お姉にバレたら事だからあんた達と泊り込みで宿題片付けてる事にしたんだ。」 そう言ってる間に三人は二条家の玄関に着いた。 「ただいまー。」 「お邪魔しまーす。」 と三人がそれぞれの挨拶とともに玄関をくぐると出迎えた双子の母親の横で なんと乙女が仁王立ちで可憐を睨んでいた。 FC2 Blog Ranking ←前へ 最初へ 次へ→ ↑目次へ |
夏合宿62009-10-15 Thu 02:00
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←前へ 最初へ 次へ→ 朝食堂にて 「あーもう痒いなあ!」 可憐と双子はあちこち藪蚊に刺されて本当に酷い状態だった。 昨日夕飯をかき込んだ後にすぐに飛び出したので、 虫除けをするのを忘れてしまったのだ。 そのせいで眠っている間に体中を刺されてしまって誠達に起こされて 目が覚めたときには猛烈な痒さに襲われていた。 「可憐ちゃん!掻くとまずいよ!」 「だって!」 「うちの風呂に入ったらある程度収まると思うけど 一応虫刺されの薬の頼んどくかい?」 と見るに見かねてオーナーが心配そうに言ってきた。 「お願いします。」 と一葉が遠慮がちに答えた。 それを聞いてオーナーは電話をかけるために部屋を出た。 「でも薬代はちゃんとお前らが出すんだぞ。」 朝食を食べながら新聞を読んでいた顧問はそう付け加えた。 「わかってます。」 と可憐は不機嫌に答えた。 「言葉は大丈夫だったのか?」 「ええ、2箇所ほど刺されましたけど大した事はありません。 誠君はどうです?」 「俺もそんな感じだな。」 そう言いながら誠は可憐を見た。 こうして見ると本当に酷い刺され方だった。 ホットパンツを履いていたので脚が数え切れないくらい赤くなってるし 腕も似たような感じだし顔も遠慮なく刺されていた。 「3人とも熱心なのはいいが虫除けくらいはしろよ。 そんなに観測会が楽しみだったのか?」 「い・いえ、そういうわけでは・・・」 『全くもう可憐ちゃんが急かすから。』 『ほんとにそうだよね。』 双子独特のアイコンタクトで一葉と二葉は話していた。 「あんた達が何考えてるか私がわからないと思ってるの?」 可憐がジト目で見ていた。 「い・いやあのね・・」 二人は可憐から同時に後ずさった。 その時 「納入業者さんについでに薬を持ってきてもらうように頼んどいたよ。 それまで風呂に浸かっといで。」 とオーナーから助け舟が出された。 女湯にて 「なんかいい感じだねえ。」 と言いながら可憐が湯船で腕を上げて背筋を伸ばした。 「本当だね、一葉ちゃん。」 「そうだね。」 一緒に浸かっている双子も同意見のようだ。 「今夜はちゃんと虫除けしようね可憐ちゃん。」 「今夜はやめとこうかな。」 「え?」 「だってまさか合宿にあの人がいるなんて思わなかったし・・ 奇襲は失敗したし正面からだと分が悪いし もう合宿なんていいや。今から普通の旅行に切り替えた。」 「それが正解だよね。 こうして温泉に浸かって美味しい物食べて。」 「そうだよね。プライベートでまた来たいよ。」 一葉がそこまで言った時に 「失礼します。」 と言葉が浴室に入ってきた。 自然に三人の視線が集まる。 「あ・あの・・・お邪魔でしたら出直しますけど・・・」 言葉は視線に気付いてたじろいだ。 でも 「いえ、どうぞどうぞ。」 と二葉が言葉を招き入れた。 言葉がカランの前に座って髪を洗っていると やはり3人の目はその姿に集中した。 可憐も二葉も自分の胸には自信を持っていたけれど 『胸だけじゃなくて顔も雰囲気も何もかも敵わないな。』 と改めて実感するしかなかった。 自分たちと言葉の差は単なる年齢による成熟度の差とは思えなかったし 誠が言葉を袖にして自分達を選ぶ状況はどうやっても考えられなかった。 三人はそんな現実を目の前で見せ付けられるとこのまま浴室から出たくなった。 一通り体を洗い終えた言葉が湯船に近づくと三人は一斉に湯船から上がった。 「もう出られるんですか?」 「はい、のぼせる前に出て何度も入り直せって言われてるので・・」 と一葉は答えた。 確かにオーナーから聞いた入浴法なので嘘ではない。 「では入らせていただきますね。」 と断ってから言葉は湯船に浸かった。 それと入れ替わりに三人はそそくさと脱衣所に消えた。 『気持ちいい。これでじっくり眠れそうです。』 三人の思いを他所に言葉は本当にゆったりとした一時を過ごしていた。 FC2 Blog Ranking ←前へ 最初へ 次へ→ ↑目次へ |
夏合宿52009-10-07 Wed 01:00
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←前へ 最初へ 次へ→ 「よしじゃあ始めるか。」 「はい。」 返事をしたのは言葉だけだった。 あとの三人は呆気にとられて何も答えられなかった。 「あっそうそう、これをみんなで飲んでくれって渡されたんだよ。」 そう言って誠は紙コップを全員に配ってオーナーから渡された 水筒から飲み物を注いで回った。 「アイスコーヒーですか?眠気覚ましに丁度いいですね。」 「そうだな。」 一方可憐と双子はヒソヒソ話をしていた。 「・・・可憐ちゃん、何か私たちバカみたいだよ。・・・」 「・・・わかってるわよ。二葉・・・」 「・・・で、どうするの?・・・」 と今度は一葉が聞いてきた。 「・・・部屋もダメ外もダメじゃ普通に合宿するしかないでしょ・・・」 可憐は完全にあきらめ顔だ。 「・・・まあそうだね。よく考えてみたらこれだけ条件が良くて 格安の旅行なんてそうそうないんだし・・・」 「・・・楽しまなきゃ損だよね。二葉ちゃん・・・」 心なしか双子は楽しそうだ。 そして双子は誠と言葉の所に行って一緒に望遠鏡を囲んで 和やかに話まで始めていた。 可憐はその様子を呆気に取られてみていた。 『何か私一人だけバカみたいじゃん。』 どうやら気持ちの切り替えは双子の方が早いようだ。 「伊藤先輩、やっぱり屋上とは見え方が違いますね。」 望遠鏡を覗きながら二葉はそう感想を漏らした。 「二葉もそう思うか?空気も澄んでるし、街の余計な明かりもないからな。」 「来て正解でしたね誠君。」 押し倒される少し前まで望遠鏡を見ていた言葉も同様のようだ。 「そうだな。みんなも喜んでくれてるし本当に良かった。」 「伊藤先輩、アイスコーヒーもう一杯いかがですか?」 「ありがとう一葉。」 誠から紙コップを受け取った一葉は水筒からコーヒーを注ごうとしたけれど 一滴も残ってなかった。 その側のベンチには可憐が紙コップ片手に不機嫌そうに座っていた。 「まさか可憐ちゃん全部飲んだの?」 「だって飲まなきゃやってられないじゃん。」 「そんな・・お酒じゃないんだから。」 「いいの!」 「そんな所でいじけてないで一緒に星見ようよ。 それにこの合宿は可憐ちゃんが言い出しっぺなんだよ。」 それでも可憐はムスッとしたままだ。 一葉は二葉に手招きをした。 二人は頷きあった後二人で可憐の両手を取ってベンチから立たせた。 「ちょちょっと何すんの!?」 「行こう可憐ちゃん。」 二葉がそう言うと二人で可憐を引きずって誠の所に連れて行った。 「伊藤先輩、可憐ちゃんにも見せてあげてもいいですか?」 「いいぞ。」 「ほらっ可憐ちゃん。」 今度は一葉に促されて可憐はしぶしぶ望遠鏡を覗いた。 「どうだ?可憐。」 「綺麗です。」 憮然としながらも可憐は認めた。 「今日は終電なんて気にしなくていいからな。 陽が出るまでじっくり見ることが出来るぞ。」 「そうですね誠君。」 「所で一葉コーヒーは?」 「もう空でした。」 とちらりと可憐を見ながら一葉は答えた。 可憐は案の定そっぽを向いて知らぬ顔をしていた。 夜明け前 一葉と二葉はベンチでもたれ合うように寝ていた。 一人でコーヒーを飲み干した可憐も二人に寄り添うように寝ていた。 結局誠と言葉だけ起きていたけれどそろそろ潮時だと判断した二人は 望遠鏡を分解して片付け始めた。 「今日はじっくりと活動できたな。」 「そうですね。」 「日本でのいい思い出になりそうか?」 「ええ、とてもいいものになりそうですよ。」 「なら良かった。」 そう言って誠は言葉を背中から抱きしめた。 言葉は可憐たちを見て寝ていることを確認してから後ろを向いて目を閉じた。 誠はそっと言葉とキスをした。 その時丁度山の稜線から朝日が顔を出した。 FC2 Blog Ranking ←前へ 最初へ 次へ→ ↑目次へ |
夏合宿42009-10-04 Sun 01:00
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←前へ 最初へ 次へ→ 話はいたるを見送った後まで遡る 誠は言葉の耳元に唇を寄せて囁いた。 「言葉、今からA高原に行くぞ。」 「えっ?今からですか?」 「ああ、今からだ。」 「本当に?」 言葉は胸元を押さえながら上半身を起こして誠を見つめた。 「ああ。」 「言葉の着替えはそのバッグをそのまま持って来たらいいし 指定券はもう手配済みだ。 俺は母さんにいたるの事を注意するように 伝言を書置きすればいいだけだし。」 「わかりました。じゃあすぐに準備しますね。」 列車にて 「誠君この列車って。」 「去年二人で乗ったのと同じ便だ。」 言葉は窓の外の町の明かりを感慨深げに見ている。 「今度は連れ戻される心配は無いぞ。」 「フフフ、あっそうだ。これは切符代です。」 と言葉は誠にお金を渡そうとした。 「いやいいんだ。」 「え?」 「母さんがさ、俺たちを連れ戻す為に言葉のお父さんとお母さんと一緒に A高原に来ただろ?」 「はい。」 「その時言葉のお母さんが高速代もガソリン代も受け取ってくれなかったそうなんだ。」 「そうなんですか。」 「で俺がそれまで言葉の所で色々とご馳走になってたし 母さんも気がすまなくてお返しをする機会を探してたらしい。 だから今回の切符がその代わりってわけ。」 「わかりました。じゃあ後で誠君のお母さんにお礼を言っておきますね。」 「まあでも食事代とか含めたらぜんぜん足りないけどな。」 「そんな。でも今回は夏合宿ですよね? 私がいてもいいんですか?」 「ああ、言葉は立派な関係者だからな。」 「私が?」 「そこは任せといてくれよ。」 その後二人は久しぶりに駅で係員の女性やオーナーと再会した。 二人から最初に聞かされたのは同じ「あの時はごめんなさい」と言う言葉だった。 再び展望台 「先輩答えてください。何故なんですか?」 「簡単に言うとだな。言葉が関係者だからだ。」 「そんな。」 「まあ聞けよ。OBやOGが合宿に参加するなんてよくある事だろ? 女バスだって何人も押しかけてるって聞いたぞ。」 可憐は数日前の女バスの合宿を思い出した。 強豪のOGだけに妥協を知らなくて部員たちを徹底してしごいて帰った。 しかもそのOGは過去自分にされたことを下の人間に行って憂さ晴らしをする タイプだったので伝統のしごきや暴言が飛び交って凄まじい状況だったのだ。 可憐は頭を振って数日前の悪夢の日々を振り払って反論に出た。 「でもその人は卒業したんじゃなくて転校したんですよね? それなのにOG扱いですか?」 「まあそう言えるかも知れないな。」 誠のその台詞を聞いて言葉の顔が更に曇った。 「じゃあ・・」 「慌てるなって。可憐、その望遠鏡をよく見てみろ。 設備や備品や寄贈の銘板がついてるか?」 可憐は言われた通りに望遠鏡を隅々まで確かめた。 結果として何もなかった。 「いいえ。」 「なぜかと言うとその望遠鏡は未だに言葉の所有物だからだ。」 「ええっ!?」 これには可憐だけじゃなくて双子も驚いていた。 学校に寄贈された物には必ず目立つ位置に寄贈した人の名前の銘板が貼られる。 それを見た他の父兄に寄贈を促す目的もあるけれど税制面等の問題もあるからだ。 だから誠は嘘を言っていない。 「つまり俺達は言葉の厚意で観測活動が出来てるわけだ。 そんな協力者を部外者扱いするのか?」 「だって・・・」 「けじめをつけるために部屋だって別々だろ? 顧問にだって話を通してるし何か問題あるか?」 「じゃあ先輩が言ってたほかのお客さんって・・・」 「言葉の事だよ。な、問題ないだろ?」 「・・・・・」 ここまで来ると可憐も沈黙するしかなかった。 「誠君。」 言葉の顔がそれまでと違って随分晴れやかになっていた。 FC2 Blog Ranking ←前へ 最初へ 次へ→ ↑目次へ |







